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 吉沢正英と会う。いつも新宿駅のプラットフォームで。階段の下と、きめていた。
ふたりで空を見る。お互いに黙って。
行先は秩父にするか、奥多摩にするか、丹沢か。会ってからきめるのだった。
数年、いつもいっしょに山に登った。
「日経」文化部の記者だった彼が亡くなって以来、一度も山に登っていない。

 

→ 後姿の「あいつ」