クレオパトラの鼻の高さがわからない。
だからこそ、もしクレオパトラの鼻の高さがもう少し低かったら、という逆説が成立するのだ。
アポリネールの詩、「とてもいとおしい僕のルウ」は、
とてもいとおしい僕のルウよ きみが好きだ
いとおしく可愛い きらめく星よ きみが好きだ
うっとりするほど 柔らかな肉体よ きみが好きだ
クルミ割りのようにしめつける 陰門よ きみが好きだ
あんなにもバラ色の 並外れた左の乳房よ きみが好きだ
泡だたないシャンパンの色をした右の乳房よ きみが好きだ
というふうに、愛する女性の性徴をつぎつぎにあげて「きみが好きだ」とつづける。
右の乳首、左の乳首、小陰唇、双つの臀、へそ、淡い毛並み、わきの下、肩、腿、耳、髪の毛、こわばる足、つよい腰、かがめた背中。そして、最後に、
比類ないまなざし 星のようなまなざし きみが好きだ
その動きをこよなく愛している手 きみたちが好きだ
とても貴族的な鼻 きみが好きだ
とつづいて終わる。
アポリネールの詩でも、いちばんすばらしい詩のひとつ。
だが、なぜ、この詩で鼻が最後にきているのだろうか。