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第3章 鼻 3-1

 
 クレオパトラの鼻の高さがわからない。
 だからこそ、もしクレオパトラの鼻の高さがもう少し低かったら、という逆説が成立するのだ。

 アポリネールの詩、「とてもいとおしい僕のルウ」は、

   とてもいとおしい僕のルウよ きみが好きだ
   いとおしく可愛い きらめく星よ きみが好きだ
   うっとりするほど 柔らかな肉体よ きみが好きだ
   クルミ割りのようにしめつける 陰門よ きみが好きだ
   あんなにもバラ色の 並外れた左の乳房よ きみが好きだ
   泡だたないシャンパンの色をした右の乳房よ きみが好きだ

 というふうに、愛する女性の性徴をつぎつぎにあげて「きみが好きだ」とつづける。
 右の乳首、左の乳首、小陰唇、双つの臀、へそ、淡い毛並み、わきの下、肩、腿、耳、髪の毛、こわばる足、つよい腰、かがめた背中。そして、最後に、

   比類ないまなざし 星のようなまなざし きみが好きだ
   その動きをこよなく愛している手 きみたちが好きだ
   とても貴族的な鼻 きみが好きだ

 とつづいて終わる。

 アポリネールの詩でも、いちばんすばらしい詩のひとつ。
 だが、なぜ、この詩で鼻が最後にきているのだろうか。

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2007年08月22日 19:40に投稿されたエントリーのページです。

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